設計士の紹介
建築家 津田茂
京都市内の南の方に位置する6人家族のための鉄骨3階建て住宅である。周辺環境は、会社や工場、住宅など、様々な用途の建物が乱立しており、必ずしも良好な住環境とは言えない。そんな場所性から生まれた必然とも言える要望の一つが家族のプライバシーを確保しつつ、明るく開放的な空間というものであった。そこで最も太陽に近い3階では「浮天井」とし、天井と壁は全周ガラスで縁を切り、間接的な自然光を取入れることで、ほどよい開放性を持たせている。2階では、その面積の半分を占める周囲を囲んだ芝生の「浮庭」を設け、家族や友人、親戚が集まれる「場」を創っている。この「浮庭」は家全体に直接自然光を取り入れる重要な役割も果たす。そして最後に、この住宅を印象付けるポイントの一つにもなっている外の「浮階段」である。浮×浮×浮=floatsとなる。
構造:あまのじゃ倶楽部
写真:絹巻豊
庭が見える風景 縁側 キッチン ダイニング ウッドデッキ
愛知県の刈谷市内での計画である。これは普段の設計手法とは全く異なる方法で進めた住宅である。オーナーは元々彫刻家だったこともあり、普段の進め方では、中々プランが固まらなかった。そこで、何とか彫刻のような住宅が出来ないかというオーナーの想いから、普段のようにスケッチをベースに計画するのではなく、発泡スチロールの塊をカッターで削りながら徐々に形を決めていき、決まった形に間取りをはめ込み、そこから立面を整えていくというスタイルで進めていった。結果的に木造多面体の形が出来たため、可能な限り室内にも外の形状をそのまま残すことで、構造と室内の一体化を図っている。これにより、垂直ラインが少ない多面体の室内空間が出来、建物内外を通して、人の五感を直接揺さぶる、不思議な感覚の住宅となっている。
構造:木構造建築研究所田原
写真:絹巻豊
計画地は、愛知県知立市内の住宅街の一画に位置する角地である。家族構成は30代前半の若いご夫婦と、その子供達の4人家族。ご夫婦の要望は、敷地を出来るだけめいっぱい使った住宅にして欲しいこと、プライバシーが守られていること等であった。そこで、まず注目したのが住宅と庭との関係性である。敷地をめいっぱい使うということは、住宅と庭との関係性が重要となると考えたからである。一般的に庭と住宅部分というのは、平面的な繋がりを持つ。しかし、ここでは庭のヴォリュームを地面から縦へと延ばし、更に上へ行くに従ってV字型に広がる縦庭を敷地の真ん中に配置し、その縦庭に沿って平面計画を行った。こうして出来た住宅は、縦庭を中心とした、内に開放された空間となり、完全なプライバシーを保つ。それは、日常的に気持ちの良い空間であると同時に、非日常が共存する住宅となる。
構造:下山建築設計室
写真:絹巻豊